5月19日に刊行された山下徹著『貢献力の経営(マネジメント)』(ダイヤモンド社)に、滝久雄著『貢献する気持ち』の文章が以下の形で引用されました。

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さらにここで、ぐるなびの代表取締役会長・滝久雄氏の言葉を挙げておきましょう。「他者に尽くそうとする貢献心の中にも、自分を満足させたいとする欲求が明確に刻み込まれているのだ。それらをむしろ自然に受け止めて、ここでは『貢献心』を人間だけに与えられた本能とみなす」(『貢献する気持ち―ホモ・コントリビューエンス』紀伊國屋書店刊)

『貢献』が人間の持つ自然な欲求であり、幸福の源泉だとすれば、その対象はどんどん広がっているのではないでしょうか。第1章で触れたように、私たちの欲求やモチベーションは時代とともに高度化しているのですから、自分の上司や同僚だけでなく、会社全体や地域、SNSの仲間など、「さまざまな人々の役に立ちたい」「つながり合いたい」と思う人が増えても不思議ではありません。

本書をお読みの皆さんは、コミュニティとの絆をどれくらい実感されているでしょうか。終身雇用が崩壊し、会社への帰属意識が薄れつつある昨今、職場でも孤独感を抱いている人は少なくないと思います。地縁や血縁も希薄になり、家族との絆すらもろいものとなりつつあります。2010年1月に放映されたNHKスペシャル「無縁社会、無縁死3万2千人の衝撃」では、家族に看取られることもなく孤独死していく人々の姿が描かれ、多くの視聴者に衝撃を与えました。

どんなに能力の高い人であれ、孤立無援の環境では生きられません。一人ひとりは、もろく小さな存在です。私たちはそれを知っているからこそ、新たなコミュニティを、助け合える相手を求めるのかもしれません。

今日、企業が果たすべき役割とは、「新たなコミュニティのプラットフォームになること」ではないでしょうか。職域に限らず、地域や知域に跨って、さまざまなコミュニティを創造しリードしていく。同時に、人々の欲求レベルに応じた新しい人事施策を導入するなど、「貢献できる人作り」の工夫も求められています。

人間の本能ともいうべき貢献を、組織の本能とするべく広げ高めていく。貢献力を企業文化、企業DNAとして伝えていく。それこそが、貢献力の経営を進めていくうえでの重要なポイントではないかと思っています。

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