「貢献心は人間の本能である」との認識のもと、人間の生き方と、実践の道を探求します

研究所長 加藤尚武より

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人間の良さに新しい光をあてることができれば、貢献心についての研究は成功したと言われるでしょう。

 

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共同研究を進めているとき、若いメンバーの一人が「いい資料が見つかりました」とすこし上気した顔色で研究室にとびこんでくる。彼は自分が共同目的に貢献できるという喜びを顔にあらわしている。こういう気持ちが人間に必ずあるということを、すぐれた先人たちは感じ取っていた。

貢献心とよく似た感情に、承認をもとめる気持ちと献身の心とがある。感情を言葉の鋳型に押し込んでしまう危険をさけながら、貢献心とその周辺を探っていくと、人間の心の中で無理の少ない形で共同の目的を達成することで充足を得るように働く気持ちの姿がみえてくるだろう。自分と他人とが響き合う領域のことを、確かめておくことがきっと私たちの生き方をよくする方向に解き放ってくれるに違いない。

アダム・スミスに「利己心が人を動かすことはわかりますが、利己心のほかにもっとよい気構えはありませんか」とたずねてみたい。経済学の領域ではインセンティブの理論が活発になりそうな勢いであるが、有効なインセンティブは利己心を働かせることだけだというドグマが一人歩きをする危険は避けなくてはならない。もっと良質のインセンティブを探すことも経済学の課題なのだから。

心の研究には、さまざまな仕方があって、脳のなかのさまざまの動きが装置を通じて読み取れるようになって以来、「その心は脳のなかのどこにありますか」という質問が必ず出る。他方では、心は心で感じるよりほかには知られないものだという主張もある。

「どちらにしますか」と聞かれたら、「どのような方法もしりぞけません」と答えよう。文学もよし、大脳生理学もよし、宗教もよし、心理学もよし。貢献心を研究することによって、わたしたちは、心について知ることのさまざまな道のそれぞれの特質を明らかにすることになるだろう。

守らなくてはならないルールは、柔らかい物はそっと扱うということだ。気持ちの細やかさを、その静かなひびきを大切にしよう。確実に確かめられることと、確かではないが大事であること、そういうさまざまな確かさの次元の違いを大切にしよう。そして、むずかしい表現をしないこと、どのような真実でもかならず平明に表現できるという、平明さへの情熱を持ち続けること。

人間の良さに新しい光をあてることができれば、私たちの研究は成功したと言われるだろう。

加藤尚武代表による「貢献する気持ち」研究レポート集はこちら
代表理事・会長 滝久雄より

 

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